東京から水墨画家のまきさんが初めてこの地に来たのはちょうど1年前。
早いもので、今回で5回目の水墨画講座となる。
講座前の打ち合わせ。手前がまきさん |
午前中は入谷小学校仮設集会場、午後は近隣にある山の神平福祉仮設での講座というスケジュール。夜行バスで早朝に仙台入りし、その後仙台在住の近藤さん(書家)の車で入谷に到着したのは朝8時過ぎだったというから、午前と午後2回の講座をこなすのは本当にシンドイはずだが、同行した井上さんも近藤さんも疲れを見せることなく、終始穏やかな笑顔で優しく指導していく。
水墨画は、興味があってもなかなか一人では始められないし、教えてくれる人も周りにそうはいないので、趣味として手軽にやってみるという感じのものではないかもしれない。
でも、一度体験するととても魅力的な世界だ。
まき先生のライブペインティング |
まきさんが描いた今までの作品(壁)と今回の画題(色紙) |
なぎさちゃんとしおりちゃん。そしてしおりちゃんのおにいちゃんも。
待ちに待ったまき先生が来てくれる土曜日はしおりちゃんのお習字の日だった。
本当は午後の時間なのにこの日に限って午前中に教室があり、水墨画講座にやっとこれたのは11時半を過ぎた頃だった。
久しぶりにまき先生に会えてうれしそうなしおりちゃん |
目を輝かせて、その日の画題が描かれた色紙をじっと見ていた。
お母さんに小さな声で「描きたい」と言ってみたけれど、午後にも講座が入っているからそれはできない。書き上げた水墨画を持って記念撮影が終わると「次の時は何を描くのかなぁ」とお母さんを見上げて聞いていた。
10歳になるかならないかの女の子が水墨画の世界に触れることはめったにない。もしかして彼女が大きくなったら水墨画を目指すかもしれないと思うと、子ども達の将来の可能性に一瞬触れたような気がした。この日、この時間を共有できたことを大切にしたい。
水墨画は奥が深い。
墨は筆と水の含ませ具合で変幻自在に色や形を変え、木々や岩になったり生き物になったりする。墨の濃淡と筆のかすり具合で全ての造形を表現できるのだ。
勿論下書きなどない。最初に描いた図柄の上からたっぷりと水を含ませた墨を大胆に載せていく。
せっかく描いた下の絵はもう影も形も見えない。でもしばらくするとうっすらと最初に描いた岩肌が
絶妙な風合いで浮かび上がってくるのだ。
あれだけ先生に「パンダはおにぎりを描くように」と言われていたのに、私が描いたのは面長パンダ、見ると描くのでは大違いだ。
筆を手に取り、白い半紙に向かうと心がすっと落ち着くような背筋が伸びるような清々しい面持になる。画もいいけれど、なんだか書道もやってみたくなった。
午後は一転して、にぎやかな福祉仮設での講座。もう5回目ともなるとなじみの顔が多く、まき先生を見つけては満面の笑みで駆け寄り手を握り占める。みんなお待ちかねといった様子。
腕前も相当実力をつけてきた感じだ。
もくもくと描く人もいれば楽しそうに隣の人と比べて笑いあったり、穏やかで優しい時間が流れる。
最初は座って見ていた参加者の人達はいつの間にか皆立ち上がってその筆さばきをじっと見つめている。 少し描けるようになったからこそ、まきさんの画の凄さもわかるらしく墨の付け方や水の含ませ方などにも注意を払っている様子。
最初は描かない!と言っていたけれど・・・。 |
おそらく最高齢のおばあちゃん。 自分の作品に満足気。 |
手が震えて描けない、と参加しなかった人が何人かいた。それでもみんなが描く様子を見て一緒になって楽しんでいたようだ。
最後にみんながそれぞれ自分の作品を手に写真を撮った後、ここでもやっぱり聞かれていた。
「次来る時は何を描くの?」と。
muramats-u
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